PARK LIFE

SPECIAL

LIVE AZUMA の会場に足を踏み入れた瞬間、アートがあなたの日常に溶け込むのを感じます。音楽だけではない、ここでしか出合えない“今”の作品たちが、空間のあちこちで生き生きと存在します。福島市在住のアーティスト・金子潤さんがキュレーションした作品群とともに、フェスの熱気と響き合うアート体験の魅力を軽やかにご案内。目に見えるもの、肌で感じる空気、そ こに流れる音楽とアートの交差点を、一緒に巡りましょう。

金子潤
1976 年、福島県生まれ。
2004 年より福島市を拠点に制作活動を開始。描く・削る・擦るといった独自の技法を駆使し、モノクロームの世界を表現している。

はじめに|LIVE AZUMA アートエリアの全体像

2025 年 10 月、福島市で開催される「LIVE AZUMA」は音楽フェスの枠を超え、アートとカルチャーを融合させた新たな体験を提供する場です。会場内には県内外から選ばれた多彩なアーティストの作品が展示され、フェス参加者だけでなく一般の来場者も自由に楽しめる無料のアートエリアが設けられています。
キュレーターの金子潤さんはこう語ります。
「東北出身で、現在は地元や県外を拠点に、国内外でも活躍しているアーティスト、また以前から繋がりのある県外を拠点にしているアーティストたち。彼らは創るを生業にし、さまざまな場所で自分の作品を届け続けています。LIVEAZUMA のようなイベントでは、音楽が好きな方はもちろんですが、普段アートにあまり触れる機会のない方、家族連れの方も多く訪れます。特に LIVEAZUMAには無料エリアもあるため、ふらっと立ち寄った方が思いがけず作品に出会う——そんな“偶然の出合い”が生まれやすい場でもあります。私は現在、福島市県庁通りで OOMACHIGALLERY というギャラリーを運営しています。ギャラリーという枠組では自然に人の目に触れるような展示は難 しいのですが、LIVEAZUMA での展示は作品が自然に目に飛び込んできます。アートを特別なものにしすぎないこの自由な空間の中で、もっと多くの人にアートやアートの役割が届くきっかけになれば嬉しいです。」

時代と場所が育む、LIVE AZUMA のアートテーマ

昨今のカルチャートレンドを敏感に捉え、“今”の日本の多様な表現を集約している本フェスのアートエリア。金子さんはテーマを次のように説明します。
「音楽と自然、人が交差する場で、その場でしか感じられない風景を作りたいという思いがあります。単なる展示ではなく、音楽カルチャーと連動し、心に残る体験として成立するアートを選んでいます。今後は各アーティストのライブペイントや、ワークショップなども企画したいと思います。」
 
写真:ライヴペイントの様子:BAKIBAKI

キュレーター金子潤さんが語る、注目アーティストたち

展示形態と特徴
今年も昨年に引き続きバナー形式の展示を中心に据えつつ、多様性豊かな作家が参加。福島の風土とフェスの空間に溶け込む作品群が見どころです。
 
 
参加アーティストと金子さんのコメント
 
BAKIBAKI
「BAKIBAKI 君は日本でライヴペイントという枠組みを定着させた存在であり、拠点にしている大阪淀川を中心に国内外様々な場所の壁画プロジェクトに携わっています。ドメスティックなカルチャーを良い意味でポップにし、参加型の空気にしていく彼の活動は、一つのアートシーンを造ったといっても良いでしょう。いずれ LIVEAZUMA の会場でライヴペイントをしてもらいたいと密かに考えています。」
 
青山トキオ
「青山トキオ君は秋田在住の画家で、2022 年 LIVE AZUMA でも作品を展示してくれたので、記憶に残っている方もいらっしゃるかと思います。ブラックミュージックを中心とした音楽への深い愛情を原動力に、多くのジャケットアートやペインティングを国内外で制作、発表しています。こんなにも寄り添った画家は他にいないと思い、初めての展示の際から声をかけ、今回2度目の作品展示となります。」
 
MHAK
「MHAK君は会津若松出身で東京在住のアーティストです。建物やショップの外壁・内装の他、キャンバス作品、有名企業や地元福島の企業との商品コラボレーションなど活動は多岐にわたります。日本のストリートアートの中心にいるような存在は福島の若い世代にとって、とても夢があり、大きな力になっていることは間違いありません。今回の展示で初めて知った方、知っていたけどさらに興味を持った方はぜひ作品展にも足を運び、彼が描く原画の職人技を見てください。」
 
苦虫ツヨシ
「苦虫ツヨシ君は、東京在住のアーティスト。独特のノリとユーモアを持ち味に、庶民的で懐かしさを感じさせる作風が特徴です。国内外での個展をはじめ、企業とのコラボレーション、音楽面では餓鬼レンジャーやLIBROや鎮座ドープネスなど様々なアーティストへのデザイン提供も行い、幅広く活躍中です。会津の湯野上温泉では、彼の描いた看板などの作品を観ることもできますよ。」
 
MUKUROZI(IZUMI&MARO)
「MUKUROZI は郡山を拠点にしている IZUMI くん、MARO さんの 2 人のユニットです。福島を中心に個展やグッズの popup の他、お店の外装や内装、看板、アメ車やトラックへのペイントの他、企業、個人経営のお店のロゴデザインなど幅広く活動しています。IZUMI 君は筆とエナメル塗料でピンストライプのようなあまりみかけない独自の作風。MARO さんは角芯で描く文字と昆虫画を描いています。」
 
HEART BOMB
「HEART BOMB さんは、東京を拠点に、VJ(ビジュアルジョッキー)、舞台映像、ライヴ演出とステージを中心に活動しています。今回もバナーへの投影ですが今後 LIVE ステージと連動したリアルなVJ での出演も期待しています。」
 
金子潤(キュレーター自身の紹介)
「2004 年から福島市を拠点に県内外で活動しています。また福島市の県庁通りにあるヤブウチビルの 3F で『OOMACHIGALLERY』というギャラリーを運営しています。」

音楽とアートが共鳴するフェス空間の魅力

金子さんは言います。
「キュレーターの役割としては、音楽と自然と人があって、その場でしか感じられない、忘れられない風景をつくりたいと思います。」
LIVE AZUMA はアートを通じてフェス全体の多層的な体験を創出し、参加者同士の交流や新たな気づきを促します。「観るだけではなく、体験する」「偶然の出合いを楽しむ」。このメッセージがアートエリアの根底にあります。

鑑賞者へのメッセージ|アートを自由に感じる楽しみ方

「フォトスポットとしてはもちろんですが、今まで知らなかったアーティストを知るきっかけになったり、そのアーティストを掘り下げて知ってもらう機会になれば嬉しいです。」と金子さん。
「意味を求めすぎず、まずは自由に見て感じていただくだけで嬉しいですが、緻密さが一つの特徴なので細部までじっくり見てもらえると面白いかもしれません。」

 
 

身近にあるライヴカルチャーとしてのアート体験

 
LIVE AZUMA のアートエリアは、音楽と同じく生きたライヴカルチャーの現場です。ここでしか感じられない文化の交差を体験し、五感で感じる贅沢な時間を味わってほしい。金子さんは最後にこう締めくくります。
「来場者一人ひとりがアートと出合い、新たな価値を見出すことが、この場の最大の喜びです。」
 
 
編集・テキスト:伊藤愉快(YOUNiiiiQ/ユニーク)