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僕らが一番ワクワクしている。『LIVE AZUMA』の作り方。 ──主催3社鼎談:クリエイティブマン×福島テレビ×フライング・ベコが語る、あづま球場の奇跡と未来


2022年の初開催から、今年で5回目を迎える『LIVE AZUMA』。 秋の福島の風物詩として定着し、全国から多くの音楽ファンが集うこのフェスですが、実は「地元メディア」「フェスプロモーター」「地元のクリエイティブチーム」という3社による実行委員会で運営されていることは、意外と知られていません。

防災・生活情報の発信だけではなく、イベントや各種事業を通じて福島の地域課題解決を目指す福島テレビ。 音楽フェス『SUMMER SONIC』をはじめ世界基準の現場を創り続けてきたクリエイティブマン・プロダクション。 そして、福島のカルチャーや街づくりを独自の視点で編集するフライング・ベコ。

背景も得意領域も異なる3チームは、どのように出会い、あづま球場という場所にフェスを根付かせてきたのか。 そこにあったのは、スマートな成功ストーリーではなく、立場を超えて意見を出し合い、周囲の人々に助けられながら進んできた泥臭いリアルでした。5年目の節目を前に、最前線に立つ3人がこれまでの歩みとこれからの景色を語り合いました。



実行委員会を支える3つの柱

【福島テレビ】

長年培ってきた地域社会からの信頼をバックボーンに、 警察・消防・行政や地域との調整、膨大な運営オペレーションという「土台」を支える。

【クリエイティブマン・プロダクション】

世界基準のステージ制作とキャスティング。誰もが安心して音楽を楽しめる、フェスとしての確かな骨組みをもたらす。

【フライング・ベコ】

会場デザインや、地元の食・クラフトの編集を担当。フェスと街の日常を地続きにし、福島ならではの居心地の良さを注ぎ込む。


主催者3者鼎談



1. あづま球場という挑戦と、3社が交差するフラットな熱量


佐藤亮太(フライング・ベコ):もともと僕らは、震災後に「福島フェス」というイベントを東京の六本木ヒルズなどで手掛けていました。福島に縁のある人を東京に集めるアプローチから始まったんですが、回を重ねるうちに「やっぱりこの熱量をそのまま地元・福島に持ち帰りたい」という気持ちが強くなっていったんです。


【福島フェスとは?】
東日本大震災後、福島の食・酒・音楽カルチャーを首都圏に発信し、復興支援とコミュニティ再構築を目的に東京・六本木ヒルズなどで開催されたイベント。フライング・ベコをはじめとする地元出身クリエイターたちが中心となって運営され、現在の『LIVE AZUMA』の前身的な思想を育む場となった。

かつて六本木ヒルズで開催されていた「福島フェス」の様子


佐藤将一(福島テレビ):僕は当時、東京で「福島フェス」にボランティアとして関わっていたんです。学生時代からフェスの現場をボランティアで手伝っていた経験もあって、「いつか地元で本格的な音楽フェスをやりたい」という夢を胸に福島テレビに入社しました。

その後、東京営業時代に『サマーソニック』の坂口さんと学生ぶりにお会いできたり、六本木で『福島フェス』を手がけていた亮太さんたちと出会う機会に恵まれて。

ローカル局として地域を盛り上げる事業を模索する中で、「亮太さんたちが六本木で育んできた熱量を、今度は一緒に福島で形にしていきませんか」と相談を持ちかけたのが、すべてのスタートでしたね。

坂口和義(クリエイティブマン):僕は将一さんが学生時代にフェスの現場をボランティアしていた頃からの知り合いで。最初に「あづま球場でフェスをやりたい」と聞いたときは、率直に「球場でやるのはかなり大変だぞ」と思いました。音楽用の施設ではないですし、芝生の保護から搬入導線、電源までクリアすべき課題が山積みですから。ただ、彼が昔から持っていた音楽やフェスに対する熱量と行動力を知っていたので、決して冗談ではなく本気なんだということはすぐに分かりましたね。

佐藤将一:フェスって複数社による実行委員会形式で運営されることも多いですが、僕らの関係性って良い意味で「縦割り」じゃないんですよね。クリエイティブマンさんが世界基準のステージやアーティストラインナップという「骨組み」を作り、僕らテレビ局が行政や地域との調整、何百人ものスタッフ手配という「土台」を固め、フライング・ベコさんが会場装飾や地元のショップとのやり取りで「温度感」を作る。役割の軸はありつつも、領域を飛び越えて全員でアイデアを出し合っています。

佐藤亮太:そうなんですよね。「プロモーターの領域だから口を出さない」とか「地元の話だから任せる」ではなくて、ブッキングからフードのラインナップ、会場の些細な導線ひとつまで、3社対等な目線で「どうしたら一番お客さんが心地よく過ごせるか」を遠慮なく議論する。フェス全体に漂うあのやさしさや温かみ、幅広い世代に親しんでもらえる空気感は、この3社のフラットな対話から自然と生まれてきたものなのかもしれません。

語り合うフライング・ベコ・佐藤亮太さん(右)とクリエイティブマン・坂口和義さん(左)。


熱く思いを語る福島テレビ・佐藤将一さん。


2. 最初からうまくいったわけじゃない。手探りの試行錯誤と、人の縁が生んだ体温


佐藤将一:ただ、最初からすべてが計算通りに運んだわけではありません。あづま総合運動公園は市民の皆さんが日常的に利用する大切な場所です。そこに数万人規模のフェスを持ち込むわけですから、ご不便をおかけしないようゴミの管理や交通対策など、今でも毎回試行錯誤の連続です。

坂口和義:運営の裏側は本当に泥臭いですよね。でも、その地道な土台がしっかりしているからこそ、アーティストも安心してステージに立てるし、お客さんもストレスフリーで過ごせる。そしてLIVE AZUMAの雰囲気を唯一無二にしているのが、あのフードやクラフトのマーケットエリアです。

佐藤亮太:あのエリアも、最初からすべて自分たちで完璧に作り上げられたわけではなくて。初年度は公募からスタートした部分も大きかったですし、そこでの出会いや縁が徐々に広がって今があります。最初は「フェスに出店したことがないから不安だ」という地元の店舗さんも多かったんですが、回を重ねるごとに「全国から来るお客さんに、福島や東北の本当に旨いものやカルチャーを自慢したい」と腕を振るってくれるようになった。

佐藤将一:主催側だけで作り上げたという感覚は全くないですね。アーティスト、出店者、スタッフ、そして来場者の皆さんと、一歩ずつこの空間を育ててきた。お客さんからの「過ごしやすかった」「美味しかった」という声はもちろん、地元の方々の「自分の街のフェスだ」という表情が増えていくことが、僕たちの何よりの支えになっています。

満員の観客で埋め尽くされたAZUMA STAGE(あづま球場)の圧巻のロケーション。


あづま総合運動公園の豊かな自然と、賑わいを見せるマルシェエリア。


【あづま球場(あづま総合運動公園)のロケーション】
2020年東京オリンピックの野球・ソフトボール競技会場としても使用された県内屈指のスポーツ施設。水と緑に囲まれた広大な敷地と、整備された美しいスタンド・常設設備を備えており、LIVE AZUMAではこの「天然のインフラ」を活かしたストレスフリーな過ごしやすさが評価されている。



3. 「福島って何もないよね」から、「福島にはAZUMAがある」と言える街へ


佐藤将一:5年目という節目を迎えて、LIVE AZUMAは一過性の大型イベントから、少しずつ「街の日常に溶け込んだ文化」へと変化してきたと感じます。だからこそ目標は、このフェスが福島の誇りとして根づき、10年、20年先もこの街の風景として残り続けることです。

佐藤亮太:以前は地元の人から「福島って何も面白いものがないよね」という言葉を聞くことも少なくなかった。でも最近では、県外の方からも地元の方からも「福島? LIVE AZUMAがある場所だよね」と言ってもらえる機会が確実に増えてきました。このフェスを通じて、「自分たちの街にもこんなに素晴らしい空間が作れるんだ」というシビックプライドを、福島に暮らす皆さんと共有できているならこれ以上の喜びはありません。

坂口和義:フェスファンや音楽好きの皆さんにとっても、秋になったらあづま球場のあの心地よい空間へ帰りたくなるような、特別な居場所であってほしい。そして、この空間を体験した地元の若い世代の中から、「将来自分もこういうイベントやカルチャーを作る側になりたい」と思ってくれる人が出てきてくれたら最高ですね。

佐藤将一:実行委員会のメンバーもそれぞれの経験を重ねてきましたが、これからも僕たち自身が誰よりもワクワクしながら、来場者の皆さん、地域の方々、そして次の世代と一緒に、このあづまの森の祝祭を育み続けていきたいと思っています。

登壇者全員集合カット(左から福島テレビ・佐藤将一さん、クリエイティブマン・坂口和義さん、フライング・ベコ・佐藤亮太さん)


※この記事は、2026年8月26日(水)に福島市の「EV GARDEN」で開催された若者向けトークセッションイベント「MAKERS’ SESSIONS vol.1 supported by Rethink PROJECT」の対話をもとに再編集したものです。

「MAKERS’ SESSIONS」は、福島を拠点に活動するクリエイティブチーム「株式会社フライング・ベコ」が立ち上げた街づくり事業の第1弾。福島でこれからの未来を担う若い世代(18歳以上)を対象に、多様な業界で活躍するプロの生の声に触れ、将来の選択肢や夢の可能性を広げてもらうことを目的にスタートしました。

記念すべき初回となった今回は、「LIVE AZUMA」の実行委員会メンバーが登壇。エンタメ・フェス業界のリアルな舞台裏、地域でカルチャーを立ち上げる苦労や醍醐味についての本音が語られ、参加した若者たちとの間で熱い言葉が交わされました。本セッションは、今後も様々なテーマで定期開催される予定です。



■ 主催3社プロフィール


・福島テレビ株式会社(福テレ)
「テレポートプラス」「サタふく」など県民のニーズに応える自社制作番組の放送だけでなく、「LIVE AZUMA」をはじめとするエンターテインメント事業の創出や、「アスノタクト」などの地域共創プロジェクトを通じた課題解決にも積極的に取り組んでいる。

・株式会社クリエイティブマン・プロダクション
『SUMMER SONIC』をはじめ、数々の大型都市型フェスや国内外トップアーティストの来日公演を手掛ける日本屈指の音楽プロモーター。LIVE AZUMAではステージ制作やブッキング、フェスとしての骨組み全般を担う。

・株式会社フライング・ベコ
福島県出身のクリエイター陣によって立ち上げられたクリエイティブチーム。ローカルの文脈を汲み取ったブランディング、会場全体の空間ディレクション、地域の飲食・クラフト作家の編集など、フェスに「福島ならではの体温」を注ぎ込む。


取材・執筆:伊藤愉快(YOUNiiiiQ)